オランダへようこそ

TBSドラマ「コウノドリ」昨晩22日最終回で紹介されていた「オランダへようこそ」。

全文を以下に掲載させていただきます。


※ 引用元 公益財団法人日本ダウン症協会


私はよく「障がいのある子を育てるのってどんな感じ?」と、聞かれることがあります。

そんな時私は、障がい児を育てるというユニークな経験をしたことがない人でも、

それがどんな感じかわかるようにこんな話をします。



赤ちゃんの誕生を待つまでの間は、まるで、素敵な旅行の計画を立てるみたい。

例えば、旅先はイタリア。


山ほどガイドブックを買いこみ、楽しい計画を立てる。

コロシアム、ミケランジェロのダビデ像、ベニスのゴンドラ。

簡単なイタリア語も覚えるかもしれない。とてもワクワクします。


そして、何カ月も待ち望んだその日がついにやってきます。 

荷物を詰め込んで、いよいよ出発。

数時間後、あなたを乗せた飛行機が着陸。 

そして、客室乗務員がやってきて、こう言うのです。


「オランダへようこそ!」

 

「オランダ!?」

 「オランダってどういうこと??私は、イタリア行の手続きをし、イタリアにいるはずなのに。ずっと、イタリアに行くことが夢だったのに。」


でも、飛行計画は変更になり、飛行機はオランダに着陸したのです。

あなたは、ここにいなくてはなりません。


ここで大切なことは、飢えや病気だらけの、こわくてよごれた嫌な場所に連れてこられたわけではないということ。 

ただ、ちょっと「違う場所」だっただけ。


だから、あなたは新しいガイドブックを買いに行かなくちゃ。 

それから、今まで知らなかった新しいことばを覚えないとね。 

そうすればきっと、これまで会ったことのない人たちとの新しい出会いがあるはず。 


ただ、ちょっと「違う場所」だっただけ。 


イタリアよりもゆったりとした時間が流れ、イタリアのような華やかさはないかもしれない。 

でも、しばらくそこにいて、呼吸をととのえて、まわりを見渡してみると、

オランダには風車があり、チューリップが咲き、レンブラントの絵画だってあることに気付くはず。


でも、まわりの人たちは、イタリアに行ったり来たりしています。

そして、そこで過ごす時間がどれだけ素晴らしいかを自慢するかもしれないのです。 

きっと、あなたはこの先ずっと

「私も、イタリアへ行くはずだった。そのつもりだったのに。」

と、いうのでしょう。


心の痛みは決して、決して、消えることはありません。

だって、失った夢はあまりに大きすぎるから。


でも、イタリアに行けなかったことをいつまでも嘆いていたら、

オランダならではの素晴らしさ、

オランダにこそある愛しいものを、

心から楽しむことはないでしょう。



©1987 BY EMILY PERL KINGSLEY. ALL RIGHTS RESERVED.

翻訳 佐橋 由利衣 Yurie Sahashi

全米ダウン症協会発行の「すばらしい可能性のある未来へ~ご懐妊&新生児のご両親へのガイド」(原題 “A Promising Future: A Guide to New and Expectant Parents”)を許可を得て翻訳


作者のエミリー・パール・キングスレイさんは、セサミストリートの作家を長く務め、1974 年にダウン症のある息子さんが生まれてからは障がいのある人々のことを知らせる働きもされています。

この「オランダへようこそ」は1987年に書かれたもので、心のなぐさめやヒントとして語り継がれています。

お子さんが自閉症スペクトラムやADHDなどの場合は

「若干の違和感がありながらも、てっきりイタリアだと思ってずっと過ごしていた。

そして2〜3年が経ち、自分たち親子の今いる居場所がオランダだという事実を知った。」

といった感じでしょうか。

(オランダというよりむしろ、エクアドル、コロンビア、ボリビア、ペルー、ブラジルのような「言語も文化も違う場所だった」といったほうがイメージが近いかもしれません。)


ドラマの劇中にもありましたが、

オランダの素晴らしさに気づきながらも「私もイタリアへ行くはずだった。そのつもりだったのに。」と心が揺れる方はたくさんいらっしゃいます。


それは悪いことでも弱いことでもありません。

悪い母親でも弱い母親でもありません。


そんな時、周囲の方は

「どうしてそんなことを言うの?」

「オランダだって素晴らしいじゃない!」

「イタリアなんて、実際はたいしたことないわよ。」

「母は強し。頑張って!」ではなく、

ゆっくり背中をさすりながら、ただただ「うんうん」と話を聞いてほしいな、支えてほしいな、と思います。

 


誕生という奇跡。長いトンネルを抜けてこの世に生まれた赤ちゃん。

どのお子さんも、どんなお母さんもすばらしい。

行き着いた先がそれぞれ違っていても、「それぞれの旅路」を楽しめるようにお互い認めあい、支えあいたいですね。

でこぼこそだて逗子

自閉症スペクトラム・ADHD・LD(学習障害)、診断の有無にかかわらず お子さんに発達の凸凹がみられる「おうちのかた」を対象とした ピアサポート(自助グループ)です。 学校や社会生活、お友達との関わり方、学びにくさなどで困っている子どもたちが 「ひとりひとり違う育ちのペース」「それぞれの子の本来の持ち味」を尊重され 安心して暮らせるよう、地域の情報を共有し、学びあい、支えあいましょう。

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